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大会報告 > 第59回全国大会

歴教協神戸大会参加記<全体会より>

山元研二(鹿児島市立東谷山中学校)

(1)地域実践報告

今年の全国大会は神戸で開かれました。
台風が接近していましたが、大会前日には通過し当日は暑いくらいの天候でした。

初日の楽しみは何といっても開会行事です。
特に地域実践報告と講演は毎年大きな「お土産」となっています。

神戸大会の地域実践報告はちょっと異例でした。
タイトルは「地域・震災に学べ、平和と未来を語る若者・子どもたち」でした。

これまでは、加藤公明さん(千葉県)や谷田川和夫さん(東京)のような著名な実践家が時間をかけて取り組みを報告するというものでしたが、今回は、兵庫県内の様々な教育実践の紹介と震災に関わる人物、実践紹介という「詰め込み」型だったような気がします。

地域の実践を紹介すると、たつの市立御津小学校の間森誉司氏による「海の中にできた畑〜成山新田ものがたり〜」あと三木高校の稲次寛氏による「憲法」「平和」の授業。

そして、最も印象に残った神戸女学院大学の石川ゼミの学生による「元従軍慰安婦」の方々への聞き取り活動でした。
もうすでに何年もかけて行われている取り組みで、本にもまとめられているようでしたが、おしゃれな装いの女性達が真剣な表情で報告をし、参加者はじっと聞き入っていました。

後半は「阪神・淡路大震災」の記憶に関する報告でした。
一人は、震災で家族を失ったという関西学院大学の若者が、子どもの時のつらい記憶を「語り部」として語り継いでいるというものでした。

「喪失感」の中から自らの使命を確認するメッセージは多くの人の感動を誘いました。
そして、もう一人は震災後の激務がたたり命を落とした女教師のひとり息子が、母のピアノに向き合いついにコンクールで優勝するまでに至ります。

その中学生の男の子がショパンの曲を披露しました。
会場は波を打ったように静まりかえり、参加者は繊細な調べに酔いしれました。

(2)文化行事

全体会を盛り上げる文化行事。
鹿児島大会では奄美の島唄が会場を魅了しました。

神戸大会では神戸中華同文学校の舞獅隊同好会による「獅子踊り」でした。
小学生たちの演じる小気味よい伴奏に乗せた中国風の獅子舞のユーモラスで力強い動きに会場は大いに沸きました。
終盤は、ステージだけでなくフロアにも獅子が何頭も登場し私たちも目の前でその姿を見ることができました。

「すごい」の声と同時に「ご苦労さん」の声も飛び交いました。

(3)講演

講師はジャーナリストの大谷昭宏。
現在はテレビのコメンテーターとして大活躍ですが、私にとっては、黒田清軍団と呼ばれた「読売新聞大阪社会部」の看板記者というイメージが強い人です。
コミックの「こちら大阪社会部」の原作者であり「新聞記者とはこうあるべき」という見本のような方です。

開口一番「今日はテレビでは言えないことがいっぱいしゃべることができるのでうれしくてしょうがない」と述べ、大いに期待しましたが、結果その通りとなりました。

最初は、直前にあった参院選に関する話題でしたが、大谷さんは「安倍自民党惨敗」という結果は「大いに予想できた事」と述べていました。
その証拠として「安倍さんがテレビに出ると確実に視聴率が落ちることはテレビ界の常識だった」と言っていました。
もう一人「視聴率を落とすやんごとなき人物」も紹介されましたが、それが誰かはここでは書けません。直接私に聞いてください。

あと安倍政権を見る時に「復古的な側面が強調される事が多いが、アメリカとの軍事同盟という側面を見落としてはならない。」と力を込めて言いました。

つまり、「愛国心」の強調は、逆から考えると「国のために命を捧げようとする若者が減り、国防がおろそかになることは、アメリカからの軍事的要求に応えられなくなることにつながる。したがって、愛国心を強調し、自衛隊入隊を希望する若者を多く育てる必要があるのです。」

なるほどと思いました。
ただ「復古調」も「日米同盟」も祖父の岸信介の路線そのもの。
「やっぱりか」という思いでした。

この文章を書いている今、安倍首相は辞任を表明しましたが、きっと「アメリカから見放されたんだろうな」と思いました。

「このタイミングで」と皆さん言いますが、APECで何らかのアメリカからのアクションがあったのではないでしょうか。
そう考えたのも大谷講演のおかげです。

他にも震災の話とかいろいろありましたが、とにかく「話上手」ですね。
盛り上げるポイントをちゃんと知っている。
もちろん全然眠くありませんでした。

(4)歴史入門講座

昨年度から分科会に「入門講座」が導入されました。
本県でも白尾さんが「学力と教育課程」でその講師を務めています。
私は、とてもいいことだと思いました。

「旬の実践」ももちろんいいのですが、実践家がこれまでの取り組みを振り返りそのエキスを「入門講座」としてまとめてくれるのは、参加者にとってとても「おいしい」企画です。

私が印象に残ったのは「中学歴史」の河原和之さんでした。
公民の方で有名な方ですが、私のイメージは「ネタ開発の達人」でした。
関西人らしいシャキシャキっとした語りでした。
現在は何と東大阪市の教育センターにいるということ。
こういう人を使いこなす行政というのもなかなかスゴイと思いました。

自己紹介でこの人は言いました。
「今、これならやれるという授業のネタが200くらいはある。」
いやあ、うらやましいセリフでした。

紹介した実践は「新・近現代史の授業改革〜岩倉欧米視察と小国主義を中心に〜」でした。
が、印象に残ったのは「授業における5つのリテラシー」でした。
列記すると

A「説明・対話型」学習
 @子どもの興味あるネタで!
 A視覚や聴覚にうったえる教材を!
 B多様な授業形態を導入する!
 C暗記強要を授業時間にする!

B「思考・判断型」学習
 D思考・判断力を培う受容方法の工夫!
 E歴史的論争課題での紙上討論!
 Fさまざまな単元で歴史リテラシーを育てる!

C「合意形成型」学習
 G歴史選択を追体験する!
 H現代的課題に対する合理的意思決定能力をつける!

D「生き方探求型」学習
 I生き方を揺さぶる学習を!
E「発信型」学習・評価
 J発信は楽しくかつ大胆に!
 Kテストの工夫と評価!

まさに「入門講座」にふさわしい提起でした。
この説明の後、授業の具体的な実践に入りましたので、とてもわかりやすかったです。

その中でも一番印象に残ったのはやはり「ネタ開発」でした。
私は思いきって質問しました。
「先生の持ち味はネタの開発だと思います。個人的資質が大きいと思いますが、何かわれわれでも出来るようなコツがあったら教えて下さい。」
いかにも入門講座らしい質問だったと思います。

いろいろ教えてくれましたが、結論としてはやはり「個人的資質」だと思いました。
ただ河原さんはこう言いました。

「でも今は私や安井俊夫さんのような先行実践があります。それを利用したうえでいろいろ考えればいいと思います。私らのころは何もなかったので大変でした。」

やはりパイオニアというのは大変なんだと思いましたし、それを受け継げる私たちは幸せだと思いました。

まだまだ収穫はありましたが、あとは他の参加者に報告を譲りたいと思います。
最後に、不謹慎とは思いますが、「夜の集い」をさぼって見た「みなと神戸花火大会」は最高でした!

(『かごしま歴教協通信』 No.36 2007年9月)

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